先日、
家の手伝いをしていたところ歴史的快挙の瞬間に立ち会ってしまったのでここに記しておこう。
30年で初。
その日はちょいと家のお店にお手伝い。
年に数少ない鍋を振り回す時間がやってきた。
オナベを振り回してきた。
いやそういうんじゃなくて。
その日の客入りはというとまあ少ないという。
私は夜に来たのだが夜の部はそれまでに3人だったという。
飲食店で3人だ。
「まあこれから来るだろう。」
私も親父も普通に何の疑問もなくそう思っていた。
事実いつもそうだった。
週末の夜は中頃からてっぺん(20時~0時)にかけて客が訪れるからだ。
だが私としてはキャベツを切ったらあとはもうやることがない。
いつもならこのペースで行けばネギを切ったり玉ねぎを切ったり人参を切ったりするものであるのに、
今日はそこに行き着かない。
それもそのはずで材料が動いていないからだ。
それでも私たちは「まあ、まだ」と考えていた。
そして次第に、
「おいおい(笑)大丈夫か(笑)週末だぞ(笑)」
「これでアレなら30年やってて初だぞこれ(笑)」
「ぜんぜんこねえな(笑)」
「(笑)」
「……(本を読んでいる)」
ついに 夜の22時を回った。
私は確信した。
今夜のバトルは伝説になる。
記録まであと少しと迫った。
不思議なこと。
いやマジで来ないから何もすることがない。
親父はテレビ見てるし、オレはなんか考え事。
とにかく来ないのである。
オレは飯を作って食ってコーヒーを飲んだが、
まだ来ない。
親父は雑誌に切り替える。
オレは軽く便意がやってきたので家に帰えろうかとか思っていた。
親父は五郎丸のポーズをやり始めた。
客が来なすぎて五郎丸のポーズをやっていた。
「五郎丸や」って思ったからねマジで。「五郎丸がおる」って。
いやマジで。マジでコレやってたからね。
麺茹でている時間になんかやってんの。
オレが鍋ふってる横で。 そういう代表感だしてんの。
そういうプレッシャーに耐えながら麺茹でてんの。
でもノータッチでスルーしたけどね。
コレに関しては客が来ないからなのか、
ただ単に親父の趣味なのかはわからないんだけど。
そしてその時。
ついに閉店。 結果、
夜の部は8人というギネス記録を達成。
我が店はじまって以来の30年間の内週末夜の部最小数記録。
すんごい記録の場に立ち会ってしまった。
親父はその後はカツ丼を黙々と食っていた。
カツ丼の作り方を「ためしてガッテン流にやったんだ」とオレに教えてきた。
しらねえよ。
うちカツ丼出してねえのに。